コーポレートガバナンス
更新日:2025年12月8日
社外取締役メッセージ(2025年8月)
取締役会の実効性評価は、2015年のコーポレートガバナンス・コード公表以来、上場企業における実務として定着し、当社でも2015年度から年度末アンケート方式でこの実効性評価を行っています。しかし、実効性評価を毎年行っているというだけで取締役会の機能が向上するわけではなく、アンケート結果をどのように読み解き、取締役会の機能向上のために活かすかが重要です。
当社取締役会の特徴
当社のように、グループ企業数が非常に多く、事業の数も多い会社の場合には、法令および会社の規程・規則に定められている取締役会決議事項には非常に多くの執行事項が含まれます。結果的に、取締役会は足元の執行事項にかかわる決議をこなすことに時間をとられ、それ以外の事項について取締役会で活発な議論をする余裕は生まれにくくなります。誤解のないように申しますと、当社は多数のM&Aをおこなう会社として知られており、当社だけでなくグループ会社が行うM&A案件も執行事項として取締役会に上程されてきますが、ことM&A議案に関する限り、事前に社外取締役に対しても丁寧な説明が行われるという慣行があることもあって、取締役会における質疑、議論も実質的なものになります。その結果、M&A議案に関する限り、取締役会は実質的な議論をする場として機能しています。とはいえ、M&A議案もしょせんは足元の執行事項ですから、個別のM&A議案の審議において、取締役会が、長期の当社事業全体の成長戦略にまで議論を及ばせるわけではありません。
2025年3月アンケートにおける意識変化
長期の経営課題については、社内取締役間では議論する機会があると思いますが、その議論が社外取締役からは見えにくいと感じたことから、この1、2年の間、社外取締役から、折に触れて、執行事項とは別に、長期の経営課題について全取締役間で議論する機会を持つことを提案し、少しずつですが、取締役会の枠外でそのような議論をする機会を持つことができるようになってきました。注目すべきは、2025年3月の実効性評価アンケートに、社内取締役側も長期の課題について全取締役間で議論することが取締役会の実効性に資すると考えていることをうかがわせるコメントが現れるようになったことです。具体的には、アンケート中の「取締役会における議論を活発にし、持続的な企業価値の向上を実現するために、どのような議論をすることが良いと考えるか」という質問に対し、過半数を超える業務担当社内取締役が、成長戦略、長期継続的な競争優位性を維持していくための経営戦略、成長戦略など会社の進むべき方向性、ポートフォリオ変換の基本的な方向性、将来どのような会社にしていくかなど、より長期に目を向けたと思われるテーマを挙げていました。これは、昨年のアンケートには見られなかったことで、私としては、注目すべき意識変化だと思っています。
実効性評価の次のステップへ
このようなテーマを議論していくことが当社の取締役会の実効性を一段上の高みに押し上げることは間違いありません。なぜならば、取締役全員でその議論をすることによって、企業価値向上のために何をなすべきかについて長期的な経営の方向性を社内取締役と社外取締役が確実に共有することができるようになるだけでなく、社外取締役は成長戦略と個々の執行事項の関係をよりよく理解することができるようになるので、取締役会における足元の執行事項の決議に際して、モニタリング機能をより実効性あるものとして発揮できるようになるはずだからです。それでこそ取締役会の実効性評価の結果が活かされるというものでしょう。取締役会の実効性は短期間で変えられるものではありません。しかし、実効性評価から読み取れる課題を少しずつでも着実にこなしていければ、取締役会の実効性は確実に向上すると考えます。












