CEOメッセージ

更新日: 2023年9月29日

画像:代表取締役会長 CEO 貝沼 由久

売上高2.5兆円、営業利益2,500億円達成に向けたコンビクション

2023年3月期は、売上高、営業利益、当期利益のすべてで過去最高を達成、売上高については、10期連続で過去最高を更新することができました。営業利益についても、自動車市場回復の遅れ、データストレージ関連の減速などの想定外の状況があったものの、M&Aや旧東京本部売却益などの一時的な収益もあり、目標として掲げてきた1,000億円を達成することができました。
2009年4月の社長就任時に、私のミッションとして①株式価値の最大化 ②100周年のための基礎固めを掲げ、「経営の本質はサステナビリティ」であるという信念のもと、成長にこだわり、その象徴として2029年3月期の売上高2.5兆円、営業利益2,500億円という高い目標を掲げてきました。14年前2,300億円だった売上高は、2023年3月期は約1兆3,000億円まで成長し、中期事業計画ではオーガニック成長だけで約1兆8,000億円の売上を見込んでいます。ここまでの成長ペースに、M&Aが加われば、2.5兆円の達成は決して不可能なものではないと考えています。
また、継続的な成長と持続可能性を追求し、利益の最大化とリスクマネジメントに努めてきました。事業を拡大していくなかで、シナジーのある「選択と集中」を心掛け、事業、人材、生産活動などあらゆる面で多角的なリスク分散体制の強化を進めてきました。これらの事業ポートフォリオが、逆境に強く、成長の余地を持つ盤石な経営体制の基盤につながっています。
2023年3月期はコネクタ、アクセスソリューション、半導体など4件のM&Aを実施し、構造改革などの布石を打つとともに、コア事業「8本槍」による大きな飛躍に向けた発射台の構築は完了したと考えています。
短期的にはデータセンター市場、マクロ経済の不透明さや市況の変動による影響があることは避けられませんが、これまで築き上げてきたコア事業8本槍がカバーし合い、現在掲げている中長期的な成長目標は必ず達成できると確信しています。

※相合:「総合」ではなく、「相い合わせる」ことを意味し、自社保有技術を融合、活用してコア事業「8本槍」を進化させるとともに、その進化した製品をさらに相合することでさまざまな分野で新たな製品を創出すること。

画像:経営理念

社会を支える世界の成長分野にはコア事業8本槍が欠かせない

今後、世界のマーケットで目覚しく成長する分野として、"EV、再生可能エネルギー、AI、XR"と捉えると、これらの成長分野に必要な技術は「高電圧、高電流、高周波、高(ハイ)スピード」といった「4高」が重要な要素になると考えています。我々のコア事業「8本槍」はこれらの技術に対して欠かせない製品であると自負しています。
例えば、EVでは、IGBTやSiCなどのパワー半導体は、モーターの回転や充電などの電気制御に使用され、高電圧・高電流に強い構造で、EVをはじめ幅広い用途での活用が進んでいます。また、パワー半導体の性能向上は、電力損失の抑制にもつながり、省エネルギー化にも貢献しています。また、この技術はEVだけでなくさまざまな最終製品に使われていきますので、グローバルニッチトップを目指す我々には、大きな可能性が広がっていく市場参入のチャンスが拡大するものと考えています。
さらに、これらのパワー半導体のテクノロジーを利用した電源だけでなく、高電流・高電圧に対応したコネクタ、センサー、モーターとその回転に使用されるベアリング、アクセス製品など、当社の8本槍のほぼすべてが関連しており、これらを「相合」することで、世界に一つしかない「相合精密部品メーカー」としての存在価値はさらに高まっていくと考えています。
物凄いスピードで成長していく市場に追随していく発射台は完成しています。お客様のさまざまな要求に対応できる部品を開発・供給していくとともに、オーガニック成長、M&Aの実施、社会的課題解決に向けた製品開発により、売上高2.5兆円/営業利益2,500億円の目標を達成していきます。

グローバルニッチトップ製品で収益性をさらに向上

中期事業計画において、売上から支給部品などを除いた場合の営業利益率、すなわち実質営業利益率を15%とする目標を社内で新たに掲げました。まず、利益を生み出すためには、トップラインを伸ばすことが必要になります。そして、利益率が増えていく製品に注力していくことが重要だと考えています。当社はグローバルニッチ分野で50%以上のシェアを持つ製品の比率が売上高の50%を占めています。利益率改善のドライバーはやはり8本槍製品であり、ベアリング、モーター、アナログ半導体、そしてアクセス製品に注目してほしいと思います。問題となるのは現在利益率が低い分野であり、経営統合により自動車向けの売上比率が増えるなか、アクセス製品は売上高3,000億円程度に対し、半導体不足や新型コロナウイルスの影響等で現在は十分な利益を生み出せていない状況です。しかし、過去低収益だったスピンドルモーターが収益を生み出し、市場で高いシェアを獲得できるまで成長してきた実績を踏まえれば、必ず今後ターンアラウンドできると信じています。事実、フラッシュハンドルやLEDバックライトなどでは、新しいプロジェクトで数年の累積売上1,000億円を超えるオーダーが入り始めています。また、私たちは、外部環境とも戦いながらM&Aで獲得した企業を、グローバルニッチ分野でトップの地位まで高める努力を続けてきました。自動車の電装化が加速するなかで、ミネベアミツミグループが持つモーター、コネクタ、センサー、ドアハンドルを相合し、フラッシュハンドル、ラッチ、コンパクトスピンドルドライブ、チャージポートドアなど、アクセス製品の分野でも他社にない当社の技術がいかせる製品に注力していけば、他社に負ける要素はないと考えています。また、これら「相合」製品はこれから段々と存在感を増していく手応えを感じています。

画像:M&Amp;Aの原則

モーターも確実に収益を生み出せる事業に成長した今、当社の収益ドライバーとしての、ベアリングだけでなく、モーター、アナログ半導体の3本の柱が形成されています。他の事業もこれに続く収益ドライバーに成長させることが必要になります。外部環境や社内リソースの配分等で実現スピードに差は出てくるかもしれませんが、当社には非常に楽しみな製品が揃っていると確信しています。

M&Aの成功にはPMIが不可欠

当社は累計55件、私が社長に就任してからは24件のM&Aを実施してきましたが、大原則として8本槍(既存ビジネス)の強化や相合ができるもので、適正価格(営業利益の10倍まで)の徹底を掲げています。さらにそのM&Aを成功させるためには、お互いにどのような会社になりたいのかという総論に基づき、共通の認識に立つとともに人と人との「相合」、PMIを丁寧におこなうことが不可欠です。
お互いの企業文化は急激に変わるものではありませんが、統合後の成長方針、どういう製品にフォーカスするかを迅速に決定し、全社でルールをシェアして目標を明確にすることで、M&Aで仲間となった方々も同じ歩みを進めることができると考えています。このような過程は、お互い人間同士がやることですから簡単ではありません。当社の場合は統合前から統合準備委員会を作り、関係者が必ず集まり夕食会等を含め親睦を深めています。このような親睦の場を積み重ねていくことで、社員同士の会話も弾むようになり、既に全員が知り合いとなった状態で統合後すぐに一体感を持って業務を開始することができます。
またお互いに現場に足を運ぶことも重要だと考えています。百聞は一見にしかずで、例えばタイで当社の工場を訪問してもらい、当社の強みである「大量生産とは何か」ということを見学していただく。そして当社も相手の現場に足を運び、徹底的に当社の考え・ルールを説明しています。このように人間と人間の触れ合いを大切にすることは、非常に手間がかかることではありますが、結果的にM&Aをスピーディーに成功させる要因になると考えています。

次世代に向けた新経営体制

当社は、経営理念、経営方針に基づいた経営戦略と、それを実現するための執行事項、執行戦略、執行アクションという体系に沿って経営をしており、従来はこのすべてを私中心にやってきました。今後は、経営戦略の策定に軸足を移しつつ、執行部分は徐々にCOOの吉田社長にバトンタッチしていきたいと思います。しかしながら、突然CEOが執行部分を完全に対応しなくなるわけではありません。必要があればこれからも自分がやるべきことは執行まで踏み込んでいきます。
問題となるのは体制・組織ではなく執行力であり、特に当社のようにいろいろな事業部が集まって相合活動に取り組むためには、業務の範囲を自分で区切ってゾーンディフェンスをするのではなく、他の事業部にも踏み込んでいくことが重要になります。これはCEOとCOO&CFO体制においても同様で、目の前にある問題に対して、それを解決できる人間がポジションにとらわれずどんどん執行していくべきだと考えています。

次世代マネジメントの育成

当社が100周年、そしてさらにその先に向かってサステナブルに成長し、世の中になくてはならない会社であり続けるために、次世代のマネジメント育成が課題であり、重要であると考えています。執行部分をCOO&CFOにお願いしていくなかで、私は次世代人材育成の活動にも力を注いでいきます。
既にさまざまな取り組みを開始しており、例えば若手社員に対しては現場評価だけに偏らないように一律の論理的思考力テストや、本人の自覚をはかる上で20年先までの長期的なキャリアプラン作成を実施しています。2023年3月に移転した東京クロステックガーデンの地下にはセミナーホールを準備しており、このような場で、優秀かつ意欲ある50~80人位の選抜された若手社員向けに私が直接教育の場をつくることも検討中です。過去の経験や経営に対する考え方について、何度も伝えていきたいと思っています。また、異業種でも人材育成に力を発揮している快進撃企業をベンチマークして、今までの「OJT」による人の成長から「教育」や「人事制度」による人の成長に舵を切って、内部の人材教育をより充実させていく所存です。
また、当社は人材登用において「対等の精神」を掲げており、優秀な人材であれば、出身企業、新卒・中途など出自を問わず、活躍のチャンスがあります。やはりゾーンディフェンスをせず、野球でいえばキャッチャーであってもセンターフライを取りに行くくらい、自分から前に出て目立ってほしいと思っています。

東京クロステックガーデンの意義と手応え

東京クロステックガーデンは、「オーガニック成長」、「M&Aによる成長」、「社会的課題解決に貢献する製品開発およびその販売」という当社の成長戦略を支えるための土台として、また、未来に向けた優秀な人材の確保、社内交流の活性化、コア事業「8本槍」の強靭化、技術シナジー・PMIの徹底などを目的として設立しました。
「相合」は、そこで働く「人」がおこないます。技術や製品を相合し、営業活動をおこなう前にそこに携わる「人」同士の相合が必要になります。お客様情報を掴み、研究開発にフィードバックし、製品を製造していくためには、しっかりとしたハード(拠点)が必要であり、東京クロステックガーデンは、売上高2.5兆円達成に向けた「門構え」と捉えています。少子高齢化の進むなかで、部品メーカーは「縁の下の力持ち」などと謙遜しているのでは、優秀な人材の獲得はますます困難になるでしょう。この新施設は必ずや優秀な人材の獲得にも一定の力を発揮すると思っています。ところで、東京クロステックガーデンの投資が具体的な成果を生むには時間がかかるかもしれませんが、既に前向きな変化が出ており、新卒採用や中途採用において応募人材の質が上がっています。現在のトップマネジメントの後継者となるような優秀な人材が将来獲得できれば、投資対効果は十分お示しできると考えています。
ただ、「器」を用意するだけではなく、そこにどんな「魂」を込めるかがチャレンジだと考えています。東京クロステックガーデンでは、積極的に交流会を開催し、M&Aで急速に拡大してきたグループ社員が部門の垣根を越えて「人」と「知」の「相合」活動に取り組みやすくなる土台を作っています。
また、少子高齢化の日本で、子供たちが将来、日本のものづくりに夢を持ってもらえるような、社会貢献を目的として、小学生を主な対象とした部品の役割が理解できるショールームもオープンする予定です。

サステナビリティの取り組みにより、さらなる成長へ

当社の経営理念は、当社の成長、そして社会の持続可能な成長の実現に向けた取り組みを両立してより一層強力に推進していくという想いを込め、「より良き品を、より早く、より多く、より安く、より賢くつくることで持続可能かつ地球にやさしく豊かな社会の実現に貢献する」と表現しています。
環境対策については、カーボンニュートラルへの挑戦、製品による世界のCO2排出量削減に貢献する「MMIビヨンドゼロ」を推進し強化しています。特に、再生可能エネルギーに関しては、タイのバンパイン・ロッブリ工場での大規模太陽光発電導入に加え、フィリピンとヨーロッパでもPPA(電力購入契約)、タイ、カンボジア工場における自社発電など、新たな活動にも取り組んでいます。
また、当社は社是「五つの心得」の第一に「従業員」を掲げています。当社グループは世界28カ国・10万人の従業員がおり、人材のダイバーシティも強みとなっています。グローバルでは、6割強が女性社員であり、特に女性管理職比率は18.8%に上ります。国内でも女性管理職比率は徐々に上昇傾向にあり、性別を問わず優秀な人材の活躍の場を広げるための制度を整えています。
また、グローバル人材の幹部社員への登用が進んでおり、本社マネジメントのうち日本人以外が7名となっています。グループ会社のマネジメントから選抜されたグループ執行役員制度もあり、定期的に会議を設けて意思疎通をはかり、各地域の課題にスピーディーに取り組む体制を構築しています。
多様なバックグラウンドを持つ従業員とコーポレートスローガンにある「Passion=情熱」を共有し、「相合」活動を進めていくことで、世界のものづくり・皆様の暮らしをお支えする「相合精密部品メーカー」として成長にこだわり続けてまいります。今後も、皆様の変わらぬご支援をよろしくお願いいたします。

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