コーポレートガバナンス
更新日:2025年12月8日
社外取締役メッセージ(2025年8月)
企業を取り巻くリスクは多岐にわたりますが、自然災害のような発生頻度に基づいて備えるべきリスクについては、データや経験に基づき発生可能性と影響を予測し、被害の軽減や代替拠点の確保等によって、事業への影響を如何に最小限に抑えるかが基本になります。また、コンプライアンス違反、サイバー攻撃といったオペレーショナルリスクについては、内部統制や業務プロセスの明確化、従業員教育、監査の実施等により、未然防止と早期対応のための体制を整備することが重要です。人口動態の変化や脱炭素化の潮流などの構造的リスクについては、トレンドが明確であるがゆえに、中長期の企業戦略に織り込む形で適応を進めることが基本となります。当社においては、例えば、少子高齢化への対応として、人材育成や省力化・自動化を推進するとともに、脱炭素社会への貢献を事業戦略の柱に位置づけています。
不確実性リスクへの対応
一方で、異なる対応が求められるのが、地政学リスクをはじめとする不確実性リスクになります。米中貿易摩擦に伴うレアアース供給不安や米国の新たな関税政策については、現在では「既知のリスク」ではありますが、一過性のものとして捉えるのではなく、国際社会が多極化する中、国際貿易体制の変容、物流・サプライチェーンの不安定化のリスク等の地政学リスクが高まる予兆として捉えるべきものと考えます。また、新たなパンデミックの出現、AIなどによる破壊的技術革新等の分野でのリスクも増大することが想定され、これらのリスクは、具体像や影響の予見が難しいものの、一度発生すると企業活動に深刻な影響を及ぼす可能性があり、対応を強化しておく必要があります。
社外取締役からの要請
このためにまず重要となるのは情報感応度の向上です。グローバルに展開する当社においては、現場からの迅速な情報の吸い上げと経営レベルでの先見的なリスク認識が不可欠になります。米国の関税政策については、今回我々社外取締役が強く要請し、当社の取締役会でストレステストやシナリオ分析を通じた事業や財務への影響を多面的に検証しました。不確実性リスクへの対応は、直近の企業の業績に直接結びつくものではないこともあり、後回しになりがちですが、今後ともリスクシナリオを幅広く想定し、不断の検証を行いつつ、影響度に応じて対策を講じていくことが必要になると考えます。
総合的な対応力の向上
その上で最も重要なのは、想定外の事態に対する総合的な対応力を高めることです。当社にとっての総合的な対応力とは、グローバルに展開した製造基盤、それを支える技術力と組織力、社会と顧客にならなくてはならない差別化された製品の安定供給による顧客との長期的な信頼関係、そして「8本槍戦略」と「相合」による多角的な製品のポートフォリオであります。例えば、2011年のタイの洪水や2020年のコロナ禍においては、会社の総力を挙げて、社員の安全確保と顧客への製品供給を継続することができました。これは、平時から構築してきた技術・生産・意思決定の体制が有事において機能した結果です。こうした総合的な対応力は、産業界全体がリスクに直面した場合には、企業間の差異として顕在化し、競争優位の源泉となります。これらは既に企業価値に直結するものとして当社の戦略の中心となっていますが、リスク対応力の向上にも不可欠であるとの視点に立って、さらなる取り組みの強化が求められます。
マテリアリティの見直し
今回、広範なリスクの洗い出しとリスク対応を通じた事業機会に関する全社的な議論がおこなわれ、マテリアリティの見直しがされたことは、非常に重要なステップであります。社外取締役として、全社的な不確実性リスクへの対応の強化に向け、引き続きガバナンス機能の一翼を担っていきたいと思っております。












