CFOメッセージ

更新日: 2023年9月29日

画像:取締役社長執行役員 COO&CFO 吉田 勝彦 - ミネベアミツミの企業価値最大化に向けた財務戦略・資本政策を確実に執行

当社は2029年3月期に、売上高2.5兆円/営業利益2,500億円を目指します。またその成長達成に伴い、ROE15%以上、EPS成長率+15%(10年間のCAGR)の水準をクリアすることをKPIとして掲げています。長期目標および中期事業計画を達成するために、私はその責任者として、策定した財務戦略と資本政策を確実に執行してまいります。
各種財務規律を設定し、徹底した財務体質の強化に取り組み、キャッシュ創出力を大きく向上させます。また、キャッシュ・アロケーション方針を明確に設定することで創出したキャッシュを適切に管理して財務基盤を強化するとともに、投資家の皆様にもご満足いただける株主還元を実施してまいります。
さらに、中長期的なポートフォリオの検討にあたっては、ROICをはじめ、資本コストを意識し、収益性によって投資するべき事業を適切に選別します。投資効率の最大化と経営資源配分の最適化を実現し、企業価値を高めてまいります。

財務戦略と資本政策

資本効率とEPS成長率

当社グループは、収益性においてROE15%以上、EPS成長率+15%以上(10年間のCAGR)のKPIを掲げ、「財務体質の強化」を基本方針として、効率的な設備投資、資産運用および有利子負債の削減等に取り組んでいます。
2023年3月期の当社のROEは13.1%であり、15%に近い水準となっています。ROICは9.5%となり、ハードルレート8%を上回る水準で推移しています。
また、2023年3月期のEPSは187.62円となりました。2029年3月期目標の営業利益2,500億円を達成させ、EPS成長率CAGR15%を実現させます。
同時に、オーガニック成長と高いキャッシュ創出力をいかしたグローバル規模でのM&Aによる成長に加え、社会的課題解決に貢献する製品の開発などの新たな事業機会の獲得に一層注力します。
このように、収益性と成長性を高め、キャッシュ創出力を最大化し、財務体質をより一層強化してまいります。

画像:ROE、ROIC及びEPSおよび配当額

キャッシュ創出力

当社は2023年3月期に売上高1兆2,922億円、営業利益は1,015億円と過去最高を更新しました。また、回収可能性を慎重に判断して設備投資をおこなってきたことも奏功しEBITDAを増加させています。2010年3月期から見ると、CAGR13%の成長を達成しました。ネット有利子負債は2024年3月期は1,700億円を見込んでいます。当社のキャッシュ創出力は着実に向上してきており、事業を拡大しつつも、ネット有利子負債を適正な水準に維持してまいります。

画像:EBITDA/ネット有利子負債/フリーキャッシュ・フローの推移

キャッシュ・アロケーションと財務基盤の安全性

キャッシュ・アロケーション

創出した営業キャッシュ・フローは、その50%をオーガニック成長の原資として設備投資に充当してまいります。残る50%のうち、半分を適切かつ機動的な株主還元に充当したうえで、ネットD/Eレシオ0.2倍の範囲という財務規律の維持を前提に、残りの半分と借入金を用いて、実効性のあるM&Aの実施を積極的に検討してまいります。

設備投資と株主還元

このような中長期的な方針のもと、2023年3月期の設備投資は、東京クロステックガーデン移転の一時的な投資を含め1,470億円となりました。2024年3月期計画については、半導体関連設備への投資などを中心に730億円としています。
また、株主の皆様への利益還元を強化するため、年間配当金については、原則として「連結配当性向20%程度を目処」とし経営環境を総合的に勘案し、継続して安定的な配当を目指しています。
3月期の1株当たり年間配当金は、前期実績36円から4円増額の40円としました。2023年2月には100億円の自社株買いを発表し実施しました。
今後の株主還元についても、同様の方針で配当と自社株買いを実施してまいります。

財務基盤の安全性

画像:格付

事業の拡大スピードを加速させると同時に、財務基盤の安定性を確保することが最重要事項と考えています。格付については、日本格付研究所(JCR)からA+格を受け、昨年11月には格付け投資情報センター(R&I)より、A+に格上げしていただくなど、2つの格付機関から高い評価を受けています。
自己資本比率については、短期的にはM&Aの実施状況により変動する可能性がありますが、中長期的には50%以上を維持し、財務基盤の安定化を目指します。

画像:キャッシュ創出力を背景とした資本配分

さらなる成長に向けた中期事業計画

2029年3月期の長期目標に向けて、当社はさらなる成長に向けた具体的なロードマップとして2023年5月に新たな中期事業計画を発表いたしました。中期事業計画では、2026年3月期に売上高1兆7,500億円、営業利益1,850億円とすることを目標としております。ベアリング・ロッドエンド、モーター、アナログ半導体、アクセス製品および相合製品を中心に、グローバルニッチトップで高収益を生み出す製品が揃い、過去のペースを上回る成長を担保する8本槍製品の基盤が整いました。
製品Mixの改善により、実質的営業利益率(支給部品等の売上高を除いた場合の営業利益率)で15%台を達成する目標も掲げています。2023年3月期には4件のM&Aを実施しました。これまで蓄積したPMIノウハウや、盤石な財務基盤により、スピーディーに中期事業計画を達成することが可能な状態となっています。
オーガニック成長、M&Aに加え、社会的課題解決に貢献する製品の開発を進め、長期目標に向けて確実な成長を実現してまいります。

画像:製品Mix改善により実質的営業利益率は15%台達成へ

収益性向上に向けた取り組み

収益性向上活動の一環として、当社は材料費率、工場経費率の削減など徹底的なコストダウンに取り組んでいます。また、固定費の変動費化にも取り組み、柔軟な原価対応力により、収益性を向上させていきます。
さらに、過去数年間、大型案件を含めて、M&Aを多数おこなってまいりましたが、当社の販管費率は11%台から下がっておらず、改善の余地が多分にあると認識しております。販管費の約半分は労務費、次に物流費と業務委託費が続きます。本テーマを重要な経営課題の一つとして捉え、ホワイトカラーの生産性向上、輸送効率の改善等により、販管費率を2%下げることを目標にプロジェクトを推進してまいります。

価値創造経営

当社グループは、資本コストを6%程度と推計し、それを2%上回る8%を投資判断における最低限のハードルレートと設定しています。事業ごとの資本コストを把握し、適切な財務戦略を実行することで資本効率の向上に取り組んでいます。売上高2.5兆円、営業利益2,500億円を達成するための支えとして、当社ではROEに加えて事業別の収益管理指標としてROICを用いています。目標とする収益力が資本コストを上回るか否か、事業別の現状と見通しを検証し、研究開発・M&A・事業撤退などをおこなっています。
事業別での収益性改善に向けた取り組み手法としては、ROIC逆ツリーを用いて利益率改善と投下資本の削減に取り組んでいます。各事業ポートフォリオの収益力強化により全社ベースでの投下資本の最適化をはかっています。このような方針のもとに収益力向上に注力した結果、2023年3月期のROICは9.5%となりました。
今後も持続的成長と中長期的な企業価値の向上への取り組みに沿った事業戦略策定および運営を目指します。資本コストの低減に向けたリスクマネジメントの実践、および製品競争力強化を支える財務戦略を実現することで企業価値向上を実現してまいります。また、ハードルレートを下回る事業については、年2回の経営会議で事業継続性を議論し、事業ポートフォリオの最適化に努めています。

画像:ROICの推移
画像:ROIC

事業ポートフォリオ戦略

事業セグメント別の売上高の成長性とROICに着目し、当社の事業ポートフォリオの現状および将来性を以下のとおり考えています。また、投下資本については、補助金等も活用しながら、効率的な設備投資を実行するとともに、事業セグメント別で在庫などの運転資金を適切な範囲にコントロールすることで、下図に示すA~Dの領域で経営資源の最適化に取り組みます。

プレシジョンテクノロジーズ(PT、旧機械加工品)

PTは、データセンターの市場回復、自動車のEV化・高機能化、航空機の需要増加などにより売上高の増加を見込んでいます。また、売上の増加に伴う利益額の拡大によって、投下資本に対する利益率(ROIC)が向上すると見込んでいます。今後も当社の中核事業としてさらなる拡大を目指してまいります。

モーター・ライティング&センシング(MLS、旧電子機器)

MLSは、車載を中心としたモーターのさらなる成長、バックライトの車載向けなどの用途拡大により、大きく成長することを見込んでいます。収益性においてもグローバルニッチトップ製品を中心に向上させます。目標成長率、ハードルレートを上回る全社収益の柱の事業として拡大していきます。

セミコンダクタ&エレクトロニクス(SE、旧ミツミ事業)

SEは、半導体や経営統合したコネクタ部門などの事業拡大により、8本槍の強化をはかってまいります。これまで売上拡大に貢献してきた光デバイスおよび機構部品は、現時点では売上高の成長率が鈍化する想定ではあるものの、新製品の取り込みなどにより成長軌道に回帰させます。徹底したコストダウン、生産性改善により、収益性を向上させてまいります。

アクセスソリューションズ(AS、旧ユーシン事業)

ASは長く収益性に課題を抱えてきましたが、ユーシン事業のPMIに注力し、欧州事業の構造改革を進めた結果、収益性の改善に一定の成果が出てまいりました。新たに経営統合したミネベア アクセスソリューションズを含め、Tier1としての好位置を最大限に活用して、売上および収益性の拡大をはかってまいります。

画像:セグメント別ポートフォリオ

グリーンボンド・フレームワークの進捗

当社はカーボンニュートラルへの挑戦やMMIビヨンドゼロを推進し環境目標を達成するとともに、省電力および革新的な精度向上に資する高品質なベアリングの生産や研究開発、脱炭素電源調達用資金として、2022年11月に当社初のグリーンボンドを発行しました。今後も持続可能な地球環境の実現に向けた取り組みを一層推し進めていきます。

リスクマネジメント

脱炭素化社会へのシフトや地政学リスクの高まりなど、当社を取り巻く事業環境は日々めまぐるしく変化しています。こうした変化に迅速かつ適切に対応するためには、利益の最大化という「攻」に加え、リスクマネジメントという「守」の強化が重要です。
当社は代表取締役会長CEOをリスク管理の最高責任者とし、「リスク管理委員会」においてリスク管理に関する重要な意思決定をおこなうとともに、具体的なリスクと対策を想定し、継続的に状況をモニタリングしています。私はCFOとして、当社の事業環境を認識かつ予想し、個々の事象が当社の事業や業績にどのようなインパクトを与えるのか、リスクや機会の発生可能性、緊急度、影響度も分析検討したうえで、戦略、施策を立て、それらを具体的かつ着実に執行することに注力しています。
当社グループにとって喫緊の課題の一つであるBCP、特に水リスク低減の取り組みについては、洪水、干ばつ等の水リスクの高い拠点の洗い出しをおこなった上で、重点的に防災マニュアルやBCPの整備、強化を進めています。
また、企業を狙うサイバー攻撃に対する抑止・防止体制の整備も重大課題と捉えています。
海外拠点を含む全社的なセキュリティ・タスク・フォースの整備、従業員に対する情報セキュリティ教育の実施に加え、セキュリティ・システムを戦略的に増強することにより、抑止・防止体制の強化を徹底しております。
さらに、各国の経済制裁や輸出管理規制の強化を受け、これらに迅速に対応し、より戦略的に事業展開するために、経済安全保障に関する社内規程の策定等を実施し、経済安全保障リスク管理の整備をおこなっております。

FAQ1:2024年3月期の業績については?

今期はマクロ経済動向、データセンター回復の不透明さなど足下の状況を踏まえつつ通期業績予想は売上高1兆4,500億円、営業利益950億円とし、特殊要因を除いた事業ベースでの過去最高益を狙います。プレシジョンテクノロジーズでは、データセンター市場の回復は不透明なものの、自動車、航空機の下半期の市場回復を期待しています。モーター・ライティング&センシングは、自動車市場の回復によりモーターが成長し、収益貢献が本格化してきます。セミコンダクタ&エレクトロニクスは、堅調な光デバイスとアナログ半導体で機構部品の減収をカバーします。アクセスソリューションズは、市場回復に伴う増収増益、経営統合効果の実現を狙います。

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