CEOメッセージ

更新日:2026年9月7日

世界を動かす、なくてはならない会社へ - 代表取締役 会長 CEO 貝沼 由久

世界を動かす技術の変化

機電一体『Electro Mechanics Solutions®』時代の到来

2009年、社長就任直後の決算発表の場で、私は当社がこれからどのような会社を目指すのか、その明確な方向性を定義しました。それが「機電一体」の世界を見据えた『Electro Mechanics Solutions®(エレクトロメカニクスソリューションズ、EMS)』というビジョンです。機械と電子、そしてソフトウェアが高度に融合する時代が必ずやってくる。その技術的変化に真正面から応えられる会社にならなければならないという強い決意を込め、この言葉を商標登録しました。それから17年が経過した今、まさに我々が予見し、準備を進めてきたEMSの時代が本格的に到来したと確信しています。

産業の歴史を振り返ると、かつては自動車やVTRなどメカニクスが豊かな生活を支える中心的な役割を担っていました。その後、半導体や電子部品が急速に進化し、エレクトロニクスの時代へと移行しました。例えば、パソコンではハードディスクからSSDへの置き換えが進み、スマートフォンの内部でも可動部分は大きく減少し、さまざまな機能が電子部品に置き換えられてきました。
しかし、「フィジカルAI」という言葉が示すように、ヒューマノイドロボットなどは、電子技術だけでは動きません。高度な電子制御に加え、実際に物を動かす機械技術、周囲の状況を把握するセンサー、そしてAIサーバーに蓄えられた情報を基にしたソフトウェアが一体となって初めて機能します。エレクトロニクスへの置き換えが進んだかのように錯覚されていた世界で、再びメカニクスの重要性が高まり、機械と電子を組み合わせた「EMS」が文字通り「世界」を動かし、超精密加工技術が真価を発揮する時代を迎えたのです。

EMSを具体的な事業戦略として展開するために、当社はコア製品「8本槍」を定めています。その定義は、大きな市場のなかのニッチ市場であること、技術革新ではなくならないこと、そして超精密加工技術に代表される当社の強みがいかせる製品であること、さらには製品を相い合わせてシナジーを生み出す「相合※」があることです。
そして、当社は、社会的課題の解決に貢献するAI、自動化、電動化、省エネルギー化、超高速通信などのニーズに応える技術的なシーズを、「4高」=「高電圧」「高電流」「高周波」「高速」と表現しています。「8本槍」は、このような技術に欠かせません。ベアリング、アナログ半導体、モーター、アクセス製品、センサー、コネクタ/スイッチ、電源、無線通信・ソフトウェアまで広がる、機械と電子を融合させた事業ポートフォリオを持つ部品メーカーは他になく、当社にしかできない、世界になくてはならない新たな価値を生み出す源泉であると自負しています。

※総合ではなく、相い合わせることを意味する造語。当社グループのあらゆるリソースを掛け合わせ、相乗効果により新たな価値を創造する。

成長の5分野+1が収益性向上のドライバーに

EMSの真価を発揮し、今後の拡大が期待される市場が、いま次々と立ち上がっています。単一市場ではなく、複数の巨大な波が同時に押し寄せる前例のない機会を確実な成長につなげるため、これらの市場を「成長の5分野+1」と位置づけ、グローバルな全社横断プロジェクトチームを編成し、開発・製造・拡販を加速しています。私も米国サンノゼ周辺を訪問し、AIサーバー、ヒューマノイドロボット、ドローンなどの最前線を視察しました。現地では、パートナーとして高い信頼性と圧倒的な供給力を持つ部品メーカーを求め、ともに成長したいという強い期待を肌で感じました。
一方、すべての市場が同じ時間軸で立ち上がるわけではありません。AIサーバーやニューモビリティ(自動車)はすでに収益貢献が拡大する一方、ヒューマノイドロボットや商用ドローン、完全自動運転は実用化・量産化の途上にあります。市場ごとの成長ステージ、投資効果を見極めながら事業機会を捉えていきます。
当社は今、規模の追求から、収益性を軸に資本効率およびキャッシュ創出力を重視する経営へと移行しています。「成長の5分野+1」に経営資源を戦略的に配分するとともに、低収益事業の構造改革を進め、利益を着実にキャッシュへつなげていきます。超精密加工技術を磨き、ニッチ領域を極めてきた当社の強みが、競争力と付加価値を高める収益性向上ドライバーとなり、いま大きな成果へと結実する「収穫期」が始まっています。

AIサーバー

AIの処理能力向上に伴い、サーバーの冷却性能と高い信頼性への要求が高まっているなか、当社は冷却ファンモーター、ベアリング、HDD向けスピンドルモーター、ピボットアッセンブリーなどで高いシェアを獲得しています。液冷化による冷却ファン需要の減少も懸念されましたが、排熱・電源機器向け大型ファンやバッテリー保護モジュール、水冷システム向け精密小型モーター、コネクタ、半導体など、ビジネスチャンスは拡大しています。

ヒューマノイドロボット

ヒューマノイドロボットには、ベアリングに加え、多数のセンサー、モーターなどが使用されます。市場が開発段階から実用化・量産段階へと移行するなか、信頼性と耐久性を備えた高品質・高付加価値部品の需要が急増すると見込んでいます。

商用ドローン

ドローン分野では、商用化の進展とともに機体の多様化が進み、市場も拡大しています。安定飛行を支えるベアリングやモーターをはじめ、各種超精密部品へのニーズも高まっています。

完全自動運転

ロボタクシーなどの普及により完全自動運転への期待が高まる中、LiDAR(ライダー)などで周囲を正確に把握し、あらゆる環境下で安定稼働する高信頼性が不可欠です。当社はベアリング、モーターなど各種部品を提供しています。

ニューモビリティ

自動車は、単なる「移動手段」から、「快適なオフィス」や「リビングルーム」として機能する空間へと変化し、快適性など高い付加価値が求められています。シートやディスプレイなどが高機能化し、高級部品の需要が拡大しています。

+1:航空宇宙

航空機分野に加え、開発が加速する宇宙産業においても、極めて高い品質・信頼性と安定した供給力が求められています。当社のロッドエンドベアリングや海外グループ会社が手掛ける特殊ベアリングなどへの需要も、着実に高まっています。

世界に「なくてはならない価値」

世界に「なくてはならない価値」

経営理念
(成長と持続可能性への貢献に対する基本的な考え方)

より良き品を、より早く、より多く、より安く、より賢くつくることで
持続可能かつ地球にやさしく豊かな社会の実現に貢献する

経営の基本方針
(経営理念を実現するための社員の行動指針)

社是「五つの心得」に基づいた透明度の高い経営

五つの心得

  • (1)従業員が誇りを持てる会社でなければならない
  • (2)お客様の信頼を得なければならない
  • (3)株主の皆様のご期待に応えなければならない
  • (4)地域社会に歓迎されなければならない
  • (5)国際社会の発展に貢献しなければならない

コーポレートスローガン(成長と持続可能性実現のための方策)

常識を超えた「違い」による新しい価値の創造
Passion to Create Value through Difference

現在当社は「世界を動かす、なくてはならない会社へ」というビジョンを掲げています。経営理念「より良き品を、より早く、より多く、より安く、より賢くつくることで持続可能かつ地球にやさしく豊かな社会の実現に貢献する」が示すとおり、超精密部品の供給によって、世界にとってはなくてはならない存在でありたいというメッセージを込めています。
世の中を動かす最先端技術の現場で我々部品メーカーに求められている「なくてはならない価値」とは何か。私は「信頼性」そして圧倒的な「供給力」に集約できると考えています。

最先端技術の性能を左右する部品の「信頼性」

まず、「信頼性」です。長く過酷な環境でも壊れずに使い続けられること、動作音が極めて静かであること、そして消費電力が少ないこと。高度化する最終製品において、部品の品質が決定的な差となります。例えば、ヒューマノイドロボットは、高性能なロボットを滑らかに動かすためには、極小の力覚センサーや減速機、そして極小ベアリングなどの超精密部品が必要不可欠です。我々の開発しているロボットの片手だけで107個、ボディ全体を含めれば約300個近いボールベアリングが使用されると推定しています。最先端技術が構想・開発段階から量産のステージを迎える中、極限の環境下でも不具合を起こさない確かな信頼性・品質を担保できることこそが、お客様、そして世界のイノベーションを加速させる最大の価値となります。

「供給力」―最先端技術の現場が求める"Time to Market"

そして「供給力」です。我々が身を置くBtoBのビジネスにおいて、コンシューマー向け最終製品を展開するお客様は、激しい市場競争のなかで勝敗を争っています。新製品を市場に投入する絶好のタイミングで、必要な部品が揃わなければ、彼らは市場から淘汰されてしまいます。「いくらで買えるか」という価格設定も重要ですが、それ以上に「必要な時に、必要な数を確実に供給できるか」という安定供給能力、そして供給スピードこそが、最重要視される価値なのです。「Time to Market」という言葉が示すように、開発から市場投入までの時間をどれだけ早められ、他社に先んじることができるかが、勝利、利益を生み出す鍵になります。

これから数年の間に、AIやロボティクス分野は本格的な競争の時代を迎えます。激動の市場において、お客様の勝利を支え、信頼性を担保する高品質の製品を、お客様の求めるボリューム・スピード(タイミング)で供給し続けること。この両立こそが、我々の部品メーカーとしての責務であると考えています。我々のコーポレートスローガン「Passion to Create Value through Difference」には、「違い」から価値を創出する情熱という意味を込めています。我々はこの情熱を持って、世界を動かす「なくてはならない会社」として真の価値を提供し続けていく所存です。

世界に「なくてはならない価値」を実現する手段

超精密加工技術と大量生産を両立する垂直統合生産

垂直統合生産システム

この「なくてはならない価値」を創出する根底にあるのが、75年にわたって蓄積したアナログ技術です。設計データだけでは再現できない、材料や加工など現場の経験に基づく匠のすり合わせが求められます。その代表である「超精密加工技術」は、ミクロン・ナノ精度の製品を億単位で大量生産するものであり、一朝一夕には獲得できない当社独自の重要な無形資産です。
さらに、当社の競争力の源泉となっているのは、「垂直統合生産システム」と、ものづくりへの徹底したこだわりです。グローバル競争の激しいベアリング業界においては、当社が外径22mm以下のサイズで世界トップシェアを維持できるのは、外輪、内輪、ボール、グリス、シールドなどの部品、さらには刃物・金型や製造装置に至るまで、すべてを内製化しているからです。工程ごとの専門人材で徹底した情報管理をおこなっていることが、模倣困難性を実現しており、極限までの作り込みのプロセスが、世界が求める価値を生み出す源泉となっています。この「垂直統合」の経営哲学は、他事業にも深く浸透しています。例えば、モーターでもシャフトや構成部品、一部モーターではドライバー(半導体)までも自社で作り込んでいます。2017年に統合したミツミ電機においても、外注していた工程を内製化することでコスト削減や生産性改善に取り組み、収益改善を実現しました。

また、当社は1970年代より海外展開を推進し、最適なグローバル生産体制の構築により強固なコスト競争力を確立してまいりました。現在、世界23か国134の生産・研究開発拠点を有していますが、このネットワークは地政学リスクやサプライチェーン分断に対する強靭なレジリエンスとして機能するだけではありません。あえてリダンダンシー(冗長性)を持たせた生産体制を築くことで、常に大量の新製品を求めるお客様からの急激な生産要求にもタイムリーに確実に応える、圧倒的な供給力を担保しているのです。カンボジア第2工場やタイ、フィリピンでの拠点整備、インドの新工場建設をはじめアクセス製品や欧州グループ会社の能力増強など、コア事業の成長につながる生産ネットワークの拡充と分散を進め、安定供給と収益性の向上を両立していきます。

「相合」― コングロマリットプレミアムの創出に向けて

もう一つの当社の大きな強みは「相合」です。機電一体の事業ポートフォリオをいかし、複数の技術と製品を「相合」することで、他社との差別化や新しい価値を生み出すことができます。
例えば、高性能なモーターを造るためには、回転性能を支える高精度なベアリング、モーターを制御するアナログ半導体、状態を検知するセンサー、電力や信号を伝えるコネクタなどが必要です。当社は、これらの重要部品の多くをグループ内に有しており、個々の部品の性能を高めるだけでなく、垂直統合によって最適化することができます。
相合製品の代表例が、BMWウィングレット(BMW社に採用されたウィングハンドル)や、AIサーバー電源向けファンモーターです。ウィングハンドルは、ドアロックのメカニカル技術にモーターやセンサー、アナログ半導体を組み合わせることで実現した高付加価値製品です。また、AIサーバー電源向けファンモーターには、高速回転に対応するベアリングや、高度な制御をおこなうドライバーICなどが使用されており、必要な部品を社内で一気通貫で開発できる当社だからこそ実現できる高い性能を備えています。ニッチ分野で高いシェアの獲得に成功し、モーター事業の収益性を牽引しています。
このほかにも、多様な技術を「相合」し、垂直統合生産の強みをいかした高付加価値製品を数多く創出しています。こうした当社ならではの製品の拡大が、高い競争力と収益性につながり、事業の収益力向上を牽引しています。
「相合」は製品を組み合わせるだけではありません。例えば、ハードディスク向けで培った流体軸受の生産工程における異物の解析技術が、全く異なる半導体の製造技術の進化に不可欠な役割を果たしています。また、スマートフォンのバックライト事業も需要終息後、償却済みの資産や確立した生産技術を車載ディスプレイやタブレット向けに応用し、新たな価値を生み出しています。「製品」だけではなく、「技術」「ノウハウ」「人」「設備」に至るまでさまざまなリソースを掛け合わせることで、「相合」の生み出す価値を高めています。

投資家の方々には、当社をさまざまな事業を寄せ集めた「コングロマリット」と捉え、ディスカウント評価される方もいらっしゃいます。しかし、我々は決して無関連な事業を集めて「総合」を目指しているわけではありません。「縫製技術」を核とするアパレル企業の店舗では、頭からつま先まで全身をコーディネートする商品が揃えられます。それと同様に、我々も「超精密加工技術」と「大量生産技術」を核とし、最先端技術を求めるお客様から「当社に聞けば必要な部品がうまく組み合わされて何でも揃う」と言っていただけるようなラインナップを目指しているのです。相合製品は当社にしかできない高付加価値製品であり、2桁超の利益率を持つ製品も多く、収益力を向上する「プレミアム」を生み出し始めています。今後数年でさらなる成果を証明できると考えています。

収益性向上への取り組み

当社は2019年に、2029年を見据えて描いた長期的な成長ビジョンとして、2029年3月期に売上高2.5兆円、営業利益2,500億円という目標を掲げてきました。これは、オーガニック成長に加えてミツミ電機、あるいはそれ以上の規模のM&Aを実現することを想定しており、中期業績予想の「Plan A」と位置付けています。一方で、2029年まで残り3年となり、「Plan B」を中期業績予想の基本として策定いたしました。これは想定していた規模のM&Aがない場合、オーガニック成長と小規模なM&Aを主体とした現実的なシナリオで、2029年に売上高1.9兆円、営業利益1,680億円を目指しています。売上高1.9兆円は、今期計画値の約1.7兆円規模からすれば、3年後の目標として十分達成可能な数字です。ここから毎年200億円ずつ利益を積みあげ、実質的営業利益率※10%超を確保していきます。将来的に良いご縁に恵まれた際には、速やかに「Plan A」へと移行する準備も整えています。

※支給部品等の売上高を除いた場合の営業利益率

営業利益率の向上は当社の重要な経営課題ですが、その改善のドライバーになるのが、「成長の5分野+1」のビジネスです。これらの市場はこれから爆発的に立ち上がる領域であり、お客様のタイムラインに遅れることなく、高品質な部品を大量に供給できる企業は、BtoBビジネスにおいて、その高い付加価値に見合った適正な価格で評価されます。これまでは価格プレッシャーの大きいBtoC向けビジネスが中心でしたが、当社の生み出す価値が顧客の勝利に貢献できれば、今後は相応の利益水準を認めていただけると考えています。
また、開発・製造・営業や調達などバリューチェーン全体で収益力向上への変革を力強く推進すべく、私の主催する「5分野+1 製品開発拡販会議」を2026年5月より月1回開催しています。ここでは開発のさまざまなボトルネックの解消、相合の推進、潜在客先の把握とアクションなどの主要テーマを議論し、巨大な成長市場における機会損失を排除し、スピーディな市場参入を目指します。

開発の変革:AIサーバー、ヒューマノイドなどの急激な需要増を確実に取り込むべく、これらの成長領域へ開発リソースを重点的にアロケーションし、製品化のスピードアップをはかっています。また「協創」にも力を入れ、産官学のパートナーの皆様との連携も強化しています。

製造の変革:成長の5分野+1の需要を取り込み、工場稼働率を極限まで高めて固定費を低減し、収益性を向上させます。製造現場ではAI・DXや自働化を推進し、リソースを高付加価値業務へシフトし、一人当たり生産性を高めています。さらに、カーボンニュートラルの取り組みも加速しており、2025年に定款を変更して太陽光発電事業へ参入しました。カンボジア、フィリピンでは再生可能エネルギー100%導入、タイ主力2工場では約50%切り替えを計画し、電力コスト削減と地域の電力供給に貢献しています。供給力と環境負荷低減を両立し、持続的成長を追求します。

営業の変革:「どれだけ売ったか」だけでなく「どれだけ利益を出したか」を自社ERPを開発して精緻に可視化し、営業利益率を最重要KPIとして評価する制度へ完全に舵を切りました。これは、本多通信工業の子会社ミネベアソフトウェアソリューションズが大きな力を発揮しました。
加えて、AI・DXの活用を全社レベルで加速し、自社開発AIによるトップマネジメントや現場の暗黙知の形式知化に取り組み、課題解決への挑戦、属人性の解消に取り組んでいます。私の過去の社員向けトップメッセージ、研修での発言録、各種メディア・インタビューなどを学習させたAIアバターの社内導入も間近です。また、革新的なアイデアの閃きの促進のため、最高賞金1,000万円のAIイノベーションチャレンジアワードも新設しました。
さらに、売上高・利益などのP/L管理だけではなく、持続的なキャッシュ創出力や資本効率性の向上を目指します。システムを開発し、P/L数値に加え、在庫関連、フリーキャッシュ・フロー、ROICなどの各種KPIを可視化し、企業価値の最大化に向けた取り組みを推進しています。

過去のトラックレコード
中期業績予想

従業員が誇りを持てる会社へ

当社は社是「五つの心得」の一つ目に、「従業員が誇りを持てる会社でなければならない」と掲げています。2011年のタイの大洪水で、工場に水が迫るなか、現地の社員が夜を徹して洪水から工場を守ってくれました。現場で陣頭指揮を執りながらこの光景を目にした私は、会社は社員に支えられていることを心から実感しました。やはり会社を動かすのは「人」であり、当社の多様な「事業」「技術」を「相合」してサステナブルグロース(持続的成長)をドライブするためには、「人」の「相合」が不可欠です。そして、持続的な企業価値向上の実現に向けたCEOとしての私の最も重要な使命は、成長機会を確実に利益へつなげるとともに、グローバル10万人の多様な社員一人ひとりの「情熱(パッション)」を引き出し、75年の歴史のなかで培われてきたミネベアミツミのDNA――現場主義、ものづくりと利益へのこだわり、そして成功への情熱――を次世代へ継承することです。

現場主義と挑戦を通じた次世代経営人材の育成

現在、当社では経営の根幹を担う人材を育成するため、コア人材の発掘・育成・強化に取り組んでおり、私自身も異業種の優れた人材育成の手法を学びながら、次世代のリーダーたちに直接語りかけています。これからのミネベアミツミの利益を創出するのは、我々の世代ではなく、彼ら次世代のリーダーたちです。研修で学ぶだけではなく、お客様の要求に誰よりも早く応え、開発・製造・販売が一体となって価値を提供し続ける「現場主義」の徹底を求めています。会長室、COO/CFO室、副社長室では、数週間から数ヵ月間にわたり次世代リーダー候補を受け入れ、現経営リーダーの傍で「経営の現場」を体験してもらうシャドーイング研修も進めています。さらに、海外を含む製造・営業の現場を熟知したメンバーが各現場の新任・現任マネージャーを育てる「サムライ・プロジェクト」など、多様なプログラムを展開しています。また、本人の自律的な挑戦を促すため、成果をより公正に評価する人事制度の改定を実施したほか、最高1,000万円を報酬とする「会長特別賞」を新設するなど、イノベーションの創出を促し、挑戦とモチベーションを喚起する仕組みづくりを強化しています。

コア人材育成プログラム 登壇の様子
コア人材育成プログラム 登壇の様子

コア人材育成プログラム 登壇の様子

M&AはPMIを重視 ものづくり・利益へのこだわりを共有

海外製造現場の視察

海外製造現場の視察

M&Aは当社の成長の原動力であり、今後も重要な経営戦略の一つです。従来の原則「①既存ビジネスの強化および/または相合が期待できること ②適正価格を徹底すること(EBIT10倍)」を基本としつつ、より収益力を重視した戦略への見直しを進めています。これまでは、コア製品「8本槍」とのシナジー創出の可能性に加え、財務規律を堅持しながら、業績が伸び悩む企業を適正な価格で取得し、ターンアラウンドを実現することで、経営統合を成功させてきました。一方で、規模の拡大を優先した結果、一部では経営統合後に収益率が一時的に低下している事業があることも認識しています。今後は、こうした事業の構造改革を進めるとともに、M&Aにおいても収益性をこれまで以上に重視していく考えです。
また、当社はM&AにおいてPMI(Post Merger Integration)を重視しています。やはり、会社は「人」が作っているものであり、買った、買われたではなく、「対等の精神」が重要です。対象会社の人材や文化を尊重しながら、統合完了後のDay1からお互いを知り、当社が徹底してきた「ものづくりと利益への徹底したこだわり」を共有し、共通の目標に向かっていくというマインドセットをいかに準備できるか、それこそが早期のシナジー創出の鍵であり、M&Aの成否をわけると考えています。

100周年に向けて― 勝敗の鍵は成功に対する「情熱」

私が次世代のリーダーに最も求めている素質、それは成功に対する「情熱」です。困難に直面した時、多くの人は途中で諦めてしまいます。しかし、そこであと半歩、前に踏み出せるかどうか。その執念と情熱こそが、超精密の世界で勝敗を分けるのです。
我々には今、これまでの歩みが正しかったことを証明する「収穫期」が訪れています。私を支えてくれる多くの社員と力を合わせて企業価値・株主価値向上に取り組み、100周年とその先の未来へ向けて「世界を動かす、なくてはならない会社」への歩みを力強くすすめてまいります。今後のミネベアミツミに、どうぞご期待ください。

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