切粉除去で製造効率が飛躍的に向上
切削加工の常識を変えた「動くノズル」

機械加工品

切削油噴射装置 Wavy Nozzle

金属の切削加工時に発生する屑を切粉と呼びます。この切粉が、製品の品質や作業効率に大きく影響を与えていることはご存知でしょうか。金属部品の製造は、この切粉との戦いと言っても過言ではありません。自社でも金属加工を行っているミネベアミツミでは、切粉の除去率を大幅に改善できる画期的な装置「Wavy Nozzle」を開発。この装置が部品メーカーの長年の課題を解決へと導きます。

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「Wavy Nozzle」及び「ウェイビーノズル」は、ミネベアミツミ株式会社の登録商標です。
日本登録商標番号 : 第 5645210号、 第 5645226号

品質向上の鍵となる切粉の処理

「歩留まりの向上」。これは部品メーカーが抱える長年の課題です。歩留まりに影響する要因は多数ありますが、特に金属加工時に発生する切粉は、この歩留まり率に大きく影響しています。

金属の切粉は、時に部品や工具の刃物に絡みつき、その除去・洗浄のために機械の停止を余儀なくされたり、工具の寿命を縮めたり、また切粉が部品に傷を付け、その品質が落ちることもあります。切粉の除去は、加工時間や不良品発生率の削減に直結しているのです。

品質の低下・工作機械の破損・作業時間の増加

切粉により生じる問題点

切粉が工具や部品に絡みついてしまう場合がある 切粉が工具や部品に絡みついてしまう場合がある

そのため、工作機械にはノズルからクーラントと呼ばれる油を吹き付け、切粉を除去する装置が付いているものがあります。しかし、従来のノズルは固定式で切粉を十分に除去できないことが多く、また材料や加工方法によって手作業でノズルの角度を調整する必要があり、その除去率や調整の手間が課題となっていました。
特に、月間数億個規模で部品を大量生産するミネベアミツミでは、不良品率が仮に1%でもあっても数百万個の不良品が生じます。


Wavy Nozzle - 動くノズルからクーラントオイルを吹き付け、切粉対策に貢献します。

「動くノズル」が切削加工の常識を変える

元々、ミネベアミツミは部品加工において高い歩留り率を誇っていましたが、月に数億個単位で部品を大量生産する同社では、1%の不良品率であっても大きな影響が生じます。切粉をもっと効果的に除去する方法はないだろうか。ミネベアミツミの精密へのこだわりが、あるひとつの解を導き出しました。それは「動くノズル」でクーラントの噴射に動きをつけ、切粉を除去しやすくするという発想。複数の事業部のノウハウ・技術と、社内の製品を結集して作られたそれは「Wavy Nozzle」と名付けられました。


切粉を誘導・排出するという
新しい発想

「Wavy Nozzle」はその名の通り、可動式のノズルを揺り動かしながらクーラントを噴射。従来の除去装置のように、クーラントを高圧で吹き付け、切粉を飛ばすのではなく、切粉を一方向に誘導し、絡みにくくするという発想はこれまでにないものでした。
自社のハードディスク部品の製造工程へ試験導入したところ、1%程度だった不良項目の発生率が0.02%までに改善されるという大きな成果をあげることができました。

切粉が一方向に流れ出るように誘導し、除去しやすくする 切粉が一方向に流れ出るように誘導し、除去しやすくする

掃き出す動きで切粉が絡みにくくなる

Wavy Nozzleの動作イメージ

切粉は切削加工の内容や原料によって、その形や重さはさまざま。どのような加工作業にも対応できるように、Wavy Nozzleの動きは3つのモードから選択できます。
特に、KICKモードは往復時にノズルの速度を変えられるミネベアミツミならではの機能。ノズルの動きには、正確な位置の制御ができる自社のステッピングモーターを使って制御しています。

また、専用コントローラーを使い、目視しながら手動でノズルを動かすことが可能な上、その動きを本体の電子基板に記憶させることができるティーチングプレイバック方式(教示再生方式)も導入。これらの機能にも、自社の電子機器製造で培った技術が活かされています。通常であれば、ノズルを可動させるためにさまざまな部品を開発・調達する必要がありますが、自社で多種多様な精密部品を製造するミネベアミツミだからこそ、既存の製品や、新たに開発を行った専用基板などを組み合わせることで「動くノズル」を実現することができました。

Wavy Nozzle専用コントローラー

専用コントローラー(オプション)による操作が可能


省スペース化と高い汎用性を両立

従来、切粉除去のためには、切粉を「吹き飛ばす」ために、高圧でクーラントを噴射する必要がありました。一方、Wavy Nozzleは切粉を「誘導」するので高圧で噴射する必要がなく、省スペース化を実現することができます。また、噴射圧が高くないため、ミネベアミツミで製造しているデリケートな精密加工部品に使用できるのも特長。
さらに小型で特別な機材がいらないため、すでに導入されている加工機械に設置しやすく、汎用性に優れます。実際、販売を開始してみると、顧客から「こんな使い方はできるか?」という問い合わせがあり、開発したミネベアミツミさえも想定していなかった使用事例が次々と寄せられました。精密加工部品に強いミネベアミツミだからこそ実現できた小型化と高い汎用性が新しい市場ニーズを掘り起こします。


自社製品と技術の応用が革新的な製品を生んだ

Wavy Nozzleのノズルを自在に揺動させるのに必要不可欠だったのが、ミネベアミツミのステッピングモーターです。加工作業に合わせてノズルを追随させる動きを、正確な位置の制御ができるステッピングモーターが担っています。また、動き出しの加減速無しで所定速度で動作できる特性が、スムーズなノズルの動きを実現。ステッピングモーターはWavy Nozzleの大きな要のひとつと言えます。

Wavy Nozzleの正確なノズル位置制御はミネベアミツミのステッピングモーターによって実現。

ノズルの動きを制御するミネベアミツミのステッピングモーター

Wavy Nozzleは本体ケース、ベアリング、電子基板、ステッピングモーターによって構成されています。

Wavy Nozzleの約80%のパーツは自社製品

ステッピングモーターだけでなく、Wavy Nozzleには自社の製品・技術が多数導入されています。本体ケースにはコア技術である樹脂成形技術、複雑な動きを制御する電子基板には電子機器の技術、滑らかで正確な動きを補助するベアリングなど、ミネベアミツミの製品と技術が集約され、約80%という高い内製化率を達成。切削加工の常識を変えた革新的な製品には、他事業部との柔軟な連携が取れるミネベアミツミならではの文化が息づいています。


徹底的な切粉の除去が製造能率を飛躍的に高め生産性向上に貢献

Wavy Nozzleは切粉除去の補助をするという非常にシンプルな装置ですが、それがもたらす恩恵は計り知れません。部品精度・製造能率の向上、また技術者の作業工数の削減に大きく寄与します。部品メーカーの長年の課題である歩留りの向上を、切粉除去により実現するという斬新なアプローチ。また、自社製品や技術を組み合わせ、新しい製品を創り出したという点も非常にミネベアミツミらしい製品であると言えます。「まさにこれが欲しかった!」と部品メーカーの技術者に言わしめたWavy Nozzleには「世界のものづくりの可能性を拡げる」というミネベアミツミの想いが込められています。

Wavy Nozzleの導入により、部品精度の向上により外観検査のNGレートは12.5%減、切粉除去のための機械停止頻度は約75%低下、切粉除去作業頻度は98%低下 Wavy Nozzleの導入により、部品精度の向上により外観検査のNGレートは12.5%減、切粉除去のための機械停止頻度は約75%低下、切粉除去作業頻度は98%低下

製品へのキズ付きが減ることによる
外観検査のNGレート

※切削工程 : 製品 : ローラー,
材質 : SUS416 : 3,500個の外観検査結果

切粉除去のための機械停止頻度

※切削工程 : 製品 : シャフト, 材質 : SUS316 : 18日間の機械停止頻度をモニター

加工後の人手による切粉除去作業頻度

※切削工程 : 製品 : シャフト,
材質 : SUS303 : 製品への切粉残り回数


インタビュー:ものづくりの現場から新たな市場ニーズを掘り起こす - メカアッシー事業部 軽井沢工場

精密加工部品の加工・組立を行っているメカアッシー事業部では、歩留り率の改善が急務でした。元々、歩留り率は高い方でしたが、さらに改善するために試行錯誤し、ノズルを揺り動かす装置の発想に至りました。これを自社の生産ラインに導入したところ、予想以上の成果を上げることができ、超精密加工のプロフェッショナルである我々が納得する製品は、絶対に世の中のものづくりを変えられるという強い確信を持つことができました。
販売を開始してみて、意外だったのがお客様からのご要望です。私たちも想像していなかった使い方や用途の質問が数多く寄せられ、Wavy Nozzleの高い汎用性に気付かされました。世の中のニーズが変われば、事業の内容も変わっていきます。ミネベアミツミはものづくりの現場を知り尽くしているからこそ、市場ニーズを捉えた新たな課題解決につながる製品を作り続け、世界のものづくりを支えていくことができると考えています。


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