ミネベアミツミ、宇宙へ!宇宙空間にも通用する超精密技術

計測機器

宇宙ロケット用圧力センサー

高精度な部品を組み合わせて製造する宇宙用ロケット。今回ミネベアミツミが開発したのはロケットの制御に欠かせない各種圧力を測定するための高精度センサー。超高精度はもちろん、宇宙特有の環境下での使用に耐え得る堅牢性、世界で加速する宇宙産業に対抗できる技術力の高さが求められました。創業以来早い時期から航空産業向けパーツの生産を続けるミネベアミツミですが、宇宙向け製品となると話は別。これまでのノウハウを最大限に活かすことで、宇宙ロケット用圧力センサーを量産品ラインで生産することに成功しました。

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さまざまな「力」を測定できるひずみゲージ

ひずみゲージとは電気抵抗の変化を検出して、そこにかかる荷重(力)を測定できるセンサーです。ひずみゲージが配置された対象物に荷重(力)が加わると、対象物のひずみとともにひずみゲージが伸縮しその電気抵抗値が変わり、その変化量を用いて荷重(力)として測定する仕組みです。

ひずみゲージの一般的な仕組み

用途、使用環境によって製品に求められる仕様が異なるため、材質や形状の細やかな選定と調整が必要となります。大きくは金属箔ひずみゲージと半導体ひずみゲージに分けられ、数ある材質の中から用途に最適なカスタマイズを行います。旧来は航空機にかかる応力を検出するための用途として開発が始まったとされ、自動車の強度解析などに採用されてきました。現在では大型トラックの積載量や酒樽の重量を量る大型のはかりから、飲料のボトル詰めや商店で使用される精密はかり用のロードセル。電子レンジの重量計やPC用キーボードのポインティングデバイス、点滴のチューブ圧を計測する医療機器用のフォースセンサー、トンネル用シールド掘削機の土圧測定。自動車エンジンのトルクを検出するトルクセンサー。空気圧や油圧を計測するための圧力センサーまで、さまざまな用途で活躍しています。近年北米市場では、衝突時のエアバックの作動を制御するために搭乗者の体重を計測するセンサーとして、自動車の助手席に搭載されたりもしています。

ノートPCのポインティングデバイスとひずみゲージ

医療用輸液ポンプに組み込まれるひずみゲージ


宇宙ロケット用圧力センサーの開発に至るまで

ミネベアミツミでは、1974年よりひずみゲージとその技術を応用した各種センサーを生産してきました。20年の歳月を経た1996年、以前から宇宙ロケット用エンジンの試験装置にミネベアミツミ製圧力計を採用いただいていた三菱重工業様からのH-ⅡAロケット用圧力センサーの開発依頼をきっかけに、ミネベアミツミは初の宇宙向け製品の開発をスタートさせることになります。過酷な環境に耐え得る宇宙用製品の開発は、ある意味ものづくりの頂点。高い防水性や耐食性を実現する製品開発、さらにパーツの安定供給を実現してほしいという要求を満たせる生産体制が求められました。高い信頼性と安定供給の両立に向け、ミネベアミツミの挑戦が始まりました。


ものづくりの頂点で求められた超高品質

宇宙ロケットに搭載するパーツには、地球とはまったく性質が異なり、僅かな誤差が大きな事故につながる宇宙空間という過酷な環境に耐えられる高い耐久性と信頼性が求められます。
量産用の金属箔ひずみゲージは一般的に計測の際の総合誤差が0.5%まで許容されますが、宇宙向けのものは0.2%の誤差までしか認められません。そこで、高精度を達成するためにサファイア基板上にシリコン膜を結晶成長させたシリコンオンサファイア(SOS)をベース素材に採用しました。サファイアは機械的性質に優れ、より高い精度で圧力を検出することが可能です。また、380℃という高温にも耐えうる事、ガンマ線などの宇宙線にも耐性があることから、宇宙向けの素材としては最適なものでした。

H-ⅡAロケットには約60台のミネベアミツミ製圧力センサーが搭載されている

超高精度を実現する
シリコンオンサファイア(SOS)


徹底した品質検査と生産管理

圧力センサーが搭載される宇宙ロケットは過酷な環境下におかれるため、振動試験による厳格な環境試験が実施されました。ロケットエンジンの燃料である液体酸素と液体水素の中ではわずかな不純物も化学反応により致命傷となるため、徹底した洗浄が施され、宇宙用の専用検査装置を用意した上での最終的な品質管理までを社内で実施しました。生産の過程においても、量産性を維持するため、宇宙向けの生産ラインは別建てせず、民生品の量産品ラインの中で生産を行いました。生産に関わる人・設備・生産をしっかりと管理することで、民生品用生産ラインの中でも付加価値の高い製品の生産が可能となり、ここで培われたノウハウと生産メンバーのスキルは他の計測センサーの生産にも活かされています。

要求されるのはナノメートル単位での精度

宇宙専用の検査装置を使用して品質を確認


インタビュー:宇宙という目標に向かって
団結した計測チーム - センシングデバイス事業部 軽井沢工場

量産品と宇宙用製品の決定的な違いには、製品そのものの特性差に加え、生産プロセスの維持方法に違いがありました。量産品の生産ではそのプロセスの中でPDCAを回し、徐々に製品の性能や生産の効率を高めていく方法が一般的ですが、宇宙用のものは一度設計を固め申請を通過すると、その後の生産プロセスは一切変更せずに維持していく必要があります。生産に携わる社員にとって初めての概念を根付かせ、その中でいかに効率性を追求していくかが難題となりました。開発を進める中、社員同士の対話は深まり、ロケットの打ち上げ時にはライブ中継を見ながら喜びあうなど、高い結束力の中で目標に向かって切磋琢磨するチームができ上がりました。超精密へ挑戦し続けるという共通した目標の中、ミネベアミツミのものづくりは常に挑戦を続けます。


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